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世界がうらやむ天然の資源を活かそう! 篠原孝
『第一次産業の復活』森と水と土の世紀(ダイヤモンド社刊)から構成


 日本は資源に恵まれた国である。
 と言えば、日本国民の大多数が、一笑に付すかもしれない。日本は、石油をはじめとして、鉱物資源に恵まれない国だということが、なかば常識となっているからである。だが、その石油に恵まれたアラブ諸国から見れば、日本には、うらやむべき資源が、豊かに存在する。
 いったい、その資源とは何であろうか。それは、温暖な気候、肥沃な土壌とたっぷりの水、そしてそれらが育てた緑に覆われた山々である。これらの、いわば天然の資源は、砂漠の国の人々から見れば、何ものにかえても手に入れたいほどの資源なのである。砂漠の国々では、緑は、国旗の色にも使われるほど尊いものであり、枯渇することのない土と水こそ、人々を養う重要な資源なのだ。石油は、大事に使い続けなければなくなってしまう「有限の」資源である。
 日本人は、資源というと鉱物資源しか頭に浮かべない人が多いが、水も太陽光も土もまた重要な資源なのである。しかも、鉱物資源が枯渇するものであるのに対し、水、太陽光、土は、人間が粗雑に扱いさえしなければ、永遠に有益な果実を生み出してくれる「再生可能資源」なのである。
 かつて、日本は、両方の資源を生み出す国土という資源を求めて海外に進出し、敗戦という痛手を受けて、狭い日本列島に戻らざるをえなくなった。そして、加工貿易立国という絶妙な手法を取り入れ、経済成長を続けて世界もうらやむ経済大国になった。しかしいま、日本製品の輸出洪水が、かつて日本がおかした海外領土の拡大と同じ印象でとらえられ、世界中から嫌われ始めている。このままでは再び固有の資源にたよらざるをえなくなるだろう。
 21世紀を考えると、足元の資源を見直すことが大切である。鉱物資源で日本に賦存するものといえば、硫黄、石炭、砂利ぐらいのものであり、よくいわれているように資源小国そのものである。一方、生物資源ともいうべき、、土、太陽光、森、草そして海などには、たいへん恵まれた意外な資源大国なのだ。
たしかに、大国と比べて土地の広さはかなり劣るが、EU諸国並ではある。だが、国土の広さだけを見てはならない。気候風土の質の豊かさに着目しなければならない。
 日本には、世界がうらやむ資源が豊かに存在する。石油などの鉱物資源とちがって、決して枯渇することのない豊かな資源を大切にしたい。それを生かす産業を守り、復活させたい。それが本稿のテーマである。


篠原孝(しのはら・たかし) 1948年長野県に生まれる。1973年京都大学法学部卒業。同年農林省入省。76〜77年米国ワシントン大学およびカンザス州立大学留学。89年農林水産省経済局国際部対外政策調整室長、91年〜94年経済協力機構(OECD)日本政府代表部参事官(パリ)をへて、94年9月より同省水産庁企画課長。主要著書:『農的小日本主義の勧め』(創林社、1995)、『食と農を問い直す』(農村統計協会、1984)、『霞が関のいなかっぺ官僚・アメリカは田舎の留学記』(柏書房、1983、『飽食のかげの星条旗』(論文「21世紀は日本型農業でーー長続きしないアメリカ型農業」を収録(共著)家の光協会、1982)


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